2010年11月27日
ホステスの筆談について
2010.11/22
昨日、なにげなくテレビを観ていたら、「筆談ホステス」をやっていた。
例の斉藤里恵さんとは、また別の方で、生まれつき耳がきこえない。
1児の母(シングルマザー)、昼間は通信教育で大学の勉強もしている。
立派だ。
夜間は銀座の「クラブM」に勤めて、
「同伴率」(これは業界用語、いわゆる「指名」のこと)、NO.1であるとのこと。
テレビでは「筆談」の様子を紹介していた。
聴覚障害のホステスさん、かわいい感じの上品な色っぽさ。
そこに、なんとなく「すけべ親父」っぽい客が、
ずいぶん楽しそうに「筆談」でコミしていた。
メモ帳みたいなノートに書く字は、両者ともに上手。
でも、スピード感はまったくない。
筆談することそれ自体が客の楽しみなのだから当然であろう。
「筆談のほうが’秘密’をたくさん語れていいですよねえ」とレポーター。
ステレオタイプの質問だ。
「お客さんとのたわいない話が筆談で楽しいです」
とかわすホステスさん。
このホステスさん、頭いい。
それはそれでいい。
クラブとは、そう言う場所だ。
大いに「筆談」をお楽みください。
私達難聴者が「筆談」を必要とする場面は全然違います。
「楽しんで筆談」なんて、とんでもない、
私達はもっと切羽つまっています。
受付で、
本心は筆談などの面倒なことはしたくない職員に、こちとら、
コメツキバッタのように頭を下げて筆談での対応をお願いしているのです。
私達は切羽詰っています。
追い込まれているのです。
筆談(2)2010.11.24
「『筆談』」の定義を述べよ」
まず、広辞苑を開いてみよう。
①随筆・筆記の類
②用件を互いに文字に記して伝え合うこと
へー? ①の意味があるの? 全然知らなかった。
我々が普通「筆談」というときは、勿論上記②の意味でしょう。
手話辞典を見てみよう。
<書く><交換>とある。
左掌に右2指で書くしぐさ、次に両掌をうわむきにして「互いに」前後入れ替える。
やはり、広辞苑と同じ定義でした。
ここで、「筆談」するときのさまざまな状況を想定してみよう。
1.AもBも共に聴者の場合
この場合は、秘密のやりとりとか特別な場合でしょう。
昔は授業中に生徒らがよくやりました。
現今では堂々と私語する者が多いが・・・。
とにかく、 「互いに文字に記して」伝えます。
2.Aが手話のできない健聴者で、Bが「ろう者」の場合。
この場合も、 「互いに」文字に記して伝え合うことになるでしょう。
3.AもBも「ろう者(ろうあ者)の場合
この場合は、筆談はめったにやらないでしょう。
両者ともに手話でコミュニケーションができちゃうのだから。
4.さて、Aが聴者でBが難聴者の場合はどうなのか。
この場合は、難聴者は、口でしゃべるわけで、書くのは聴者だけ。
「互いに」書くわけではない。
広辞苑の「筆談」の定義には、4の場合を想定していないようです。
ここに、「耳の不自由な人」=「ろう者」と想定しているからであり、
要するに難聴者の存在などは、はなっから無視されているということ。
広辞苑といえばその第4版で「要約筆記」という言葉を見出し語に加えた。
ずいぶんご理解のある辞典であると尊敬していたのですが・・・
少しがっかりですね。
難聴者団体の定例会などで仲間に出会ったような場合を除いては
難聴者が「互いに文字に記して伝え合う」という場面は、めったにない。
筆談(3) 2010.11.27
日常に於いては難聴者は、聴者のなかで暮らしている。
難聴者は普通に話し、聴者からは書いてもらう。
「筆談」で応じいてくださる相手に対して「申し訳ない」という気持ちが、まず、先立つ。
そこにストレスが生ずるのである。
例外として、話し相手が要約筆記者の場合がある。
手書きとかパソコンとかの専攻にかかわらず、
相手が要約筆記者のときは、あまりストレスを感じない。
気楽だ!
それはさておき、
郵便局で年賀ハガキを買う場合、どうするか。
「ハガキ100枚ください」
と、普通に話しかければ、必ず次に困った状況になります。
「無地か、絵入りか、インクジェットか・・・」
などと問い返されます。
聞きとれなくて、「え?」{え?」を連発したあげく、
結局最後には書いてもらうというのは、いかにも策がなさすぎます。
そのことがわかっているから私は、最初から紙に書いて持っていきます。
「普通ハガキ100枚。無地。インクジェット」
と書いた紙を出します。
自分が耳が不自由であることを伝えます。
そうすれば、相手を、ごく自然に「筆談」に誘い込むことができます。
駅で身体障害者手帳を見せて割引切符を買うときも同じ。
「北中込、往復、明日使用、大人1人、新幹線利用」
など、できるだけ多くの情報を書いて渡します。
難聴者における「筆談上手」とは、決して「字が上手」という意味ではない。
相手にスムースに筆談していただけるように
工夫して上手に質問やお願いを伝えること、
それが、難聴者の側における「筆談上手」というものだろう。
一方、健聴者側の「筆談上手」とは、
「必要にして十分な情報」を、
簡潔にすばやく書いて伝える能力、
ということになるだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
追記 2017.6.29
「筆談」に関する、2010年11月の記事をまとめてみました。
難聴者にとって筆談とは、たいがいが
READ ONLY
である。
難聴者は、このことに、とても
「うしろめたさ」
を感じている。
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昨日、なにげなくテレビを観ていたら、「筆談ホステス」をやっていた。
例の斉藤里恵さんとは、また別の方で、生まれつき耳がきこえない。
1児の母(シングルマザー)、昼間は通信教育で大学の勉強もしている。
立派だ。
夜間は銀座の「クラブM」に勤めて、
「同伴率」(これは業界用語、いわゆる「指名」のこと)、NO.1であるとのこと。
テレビでは「筆談」の様子を紹介していた。
聴覚障害のホステスさん、かわいい感じの上品な色っぽさ。
そこに、なんとなく「すけべ親父」っぽい客が、
ずいぶん楽しそうに「筆談」でコミしていた。
メモ帳みたいなノートに書く字は、両者ともに上手。
でも、スピード感はまったくない。
筆談することそれ自体が客の楽しみなのだから当然であろう。
「筆談のほうが’秘密’をたくさん語れていいですよねえ」とレポーター。
ステレオタイプの質問だ。
「お客さんとのたわいない話が筆談で楽しいです」
とかわすホステスさん。
このホステスさん、頭いい。
それはそれでいい。
クラブとは、そう言う場所だ。
大いに「筆談」をお楽みください。
私達難聴者が「筆談」を必要とする場面は全然違います。
「楽しんで筆談」なんて、とんでもない、
私達はもっと切羽つまっています。
受付で、
本心は筆談などの面倒なことはしたくない職員に、こちとら、
コメツキバッタのように頭を下げて筆談での対応をお願いしているのです。
私達は切羽詰っています。
追い込まれているのです。
筆談(2)2010.11.24
「『筆談』」の定義を述べよ」
まず、広辞苑を開いてみよう。
①随筆・筆記の類
②用件を互いに文字に記して伝え合うこと
へー? ①の意味があるの? 全然知らなかった。
我々が普通「筆談」というときは、勿論上記②の意味でしょう。
手話辞典を見てみよう。
<書く><交換>とある。
左掌に右2指で書くしぐさ、次に両掌をうわむきにして「互いに」前後入れ替える。
やはり、広辞苑と同じ定義でした。
ここで、「筆談」するときのさまざまな状況を想定してみよう。
1.AもBも共に聴者の場合
この場合は、秘密のやりとりとか特別な場合でしょう。
昔は授業中に生徒らがよくやりました。
現今では堂々と私語する者が多いが・・・。
とにかく、 「互いに文字に記して」伝えます。
2.Aが手話のできない健聴者で、Bが「ろう者」の場合。
この場合も、 「互いに」文字に記して伝え合うことになるでしょう。
3.AもBも「ろう者(ろうあ者)の場合
この場合は、筆談はめったにやらないでしょう。
両者ともに手話でコミュニケーションができちゃうのだから。
4.さて、Aが聴者でBが難聴者の場合はどうなのか。
この場合は、難聴者は、口でしゃべるわけで、書くのは聴者だけ。
「互いに」書くわけではない。
広辞苑の「筆談」の定義には、4の場合を想定していないようです。
ここに、「耳の不自由な人」=「ろう者」と想定しているからであり、
要するに難聴者の存在などは、はなっから無視されているということ。
広辞苑といえばその第4版で「要約筆記」という言葉を見出し語に加えた。
ずいぶんご理解のある辞典であると尊敬していたのですが・・・
少しがっかりですね。
難聴者団体の定例会などで仲間に出会ったような場合を除いては
難聴者が「互いに文字に記して伝え合う」という場面は、めったにない。
筆談(3) 2010.11.27
日常に於いては難聴者は、聴者のなかで暮らしている。
難聴者は普通に話し、聴者からは書いてもらう。
「筆談」で応じいてくださる相手に対して「申し訳ない」という気持ちが、まず、先立つ。
そこにストレスが生ずるのである。
例外として、話し相手が要約筆記者の場合がある。
手書きとかパソコンとかの専攻にかかわらず、
相手が要約筆記者のときは、あまりストレスを感じない。
気楽だ!
それはさておき、
郵便局で年賀ハガキを買う場合、どうするか。
「ハガキ100枚ください」
と、普通に話しかければ、必ず次に困った状況になります。
「無地か、絵入りか、インクジェットか・・・」
などと問い返されます。
聞きとれなくて、「え?」{え?」を連発したあげく、
結局最後には書いてもらうというのは、いかにも策がなさすぎます。
そのことがわかっているから私は、最初から紙に書いて持っていきます。
「普通ハガキ100枚。無地。インクジェット」
と書いた紙を出します。
自分が耳が不自由であることを伝えます。
そうすれば、相手を、ごく自然に「筆談」に誘い込むことができます。
駅で身体障害者手帳を見せて割引切符を買うときも同じ。
「北中込、往復、明日使用、大人1人、新幹線利用」
など、できるだけ多くの情報を書いて渡します。
難聴者における「筆談上手」とは、決して「字が上手」という意味ではない。
相手にスムースに筆談していただけるように
工夫して上手に質問やお願いを伝えること、
それが、難聴者の側における「筆談上手」というものだろう。
一方、健聴者側の「筆談上手」とは、
「必要にして十分な情報」を、
簡潔にすばやく書いて伝える能力、
ということになるだろう。
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追記 2017.6.29
「筆談」に関する、2010年11月の記事をまとめてみました。
難聴者にとって筆談とは、たいがいが
READ ONLY
である。
難聴者は、このことに、とても
「うしろめたさ」
を感じている。
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