2011年08月16日

難聴者の心の奥に潜む「アンビバレンス

私が補聴器を初めて購入したのは昭和43年、ピンキーとキラーズ(※)の頃である。
当時、私の住んでいた佐久地域では補聴器の専門店は皆無で、
メガネ店で補聴器を扱っている店はあったが品揃えが少なく、東京から取り寄せてもらった。
箱型のもので、それなりに音は大きくなって聞こえたが、人の話はなかなか聞きとれなかった。

やがて、メガネ式(メガネのツルに小型のマイクがついているヤツ)とか、
耳掛式とか、耳穴式とか、たくさんの種類の補聴器が出始めた。

多くの種類を体験したいと思い、地下鉄淡路町近くの補聴器専門店まで足を運んだ。

「メガネ式」は、見た目には補聴器であると気づかれることなく、なかなかのアイデア商品ではあったが、
メガネと合体していることが、かえって取り扱いづらい原因となり、
そして、すぐに故障した。(やがてこの機種は世の中から消えた)。

昭和48年以降私は、耳かけ式と箱型の二種類を購入し、時と場合によって使い分けるようにしていた。
卓球をするときには耳かけ式が都合よく、ラケットがボールをとらえる際の、あのコーン・コーンという音が、
快く耳に響いた。一方、会議等では箱型を使っていた。

耳かけ補聴器をポケットにいれ、そのことを忘れて洗濯機にかけてしまったとか
ワイシャツの胸ポケットにいれてトイレでしゃがんだ拍子に、後架のなかに落としてしまったとか、
ということもあった。

デジタル補聴器が出現して、耳かけ式の数十万円のものを何度も試し聞きした。
会話の聞こえづらいことには変わりなかった。

箱型のメリットは、自分が難聴であることを相手に無言で知らせることができること、
人を訪問する時インターホーンに近づけることができることなど。
デメリットは、コードが邪魔になり、スポーツができないことなどです。

現在では、耳かけ式はパワー不足で使い物にならないので、箱型だけにしています。

私の場合、補聴器の使用は常時ではなく、どうしても必要な時のみに装用しています。
ふだんは、常にポケットに紙とエンピツを携えて、書いてもらうようにしています。
初対面の人には、ちょっとだけですが手話を使うことにより、自分が聞こえないことを知ってもらいます。
                                      2011.8.16 記
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追記 2017,11.19
要約筆記入門講座で箱型の補聴器をお見せすると、大概の方は驚かれる。
初めて見た、と仰る。
今、箱型を使っている人は、めったにいない。

箱型補聴器に使用する電池は、単3電池で、コンビニでも売っている。
箱型は今どきの補聴器店には置いてないので、外国から取り寄せてもらう。
6万円~7万円ぐらいだが、福祉補助で、実際には1万円程度の出費である。

聞こえは、箱型も耳かけ型も同じ。
私の場合、コミュニケーション手段としては、どんな高額の補聴器も役に立たない。
ただ、自分の声を聴いたり、音を聴いたりするためだけのものだから、
箱型で十分なのである。

箱型のメリットは、「自分が難聴であることを相手に無言で知らせることができること」
このメリットは大きい。

難聴者は外部から見ても分からないので・・・などと、とく言われるが、
箱型なら、外部から見て、よくわかる。
どうして箱型が、(わが國では)事実上消滅してしまったのか、
それは、難聴者が購入しないからであろう。

自分が難聴であることを知られたくない、という難聴者心理である。
一方では、難聴者に対する世の中の理解が足りない、などと言っている。
理解してもらいたいなら、自分が難聴であることを知らせる手立てが必要だ。、
にもかかわらず補聴器は、年々、小さく、小さく、目立たなく、目立たなくなっていく。

難聴者の心の奥に潜む「アンビバレンス」である。

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Posted by 六万石 at 06:14 │つぶやき万華鏡補聴器